2013年12月25日

「奥様は魔女」のクリスマス

現在テレビ東京が「奥様は魔女」を再放送している。懐かしい番組で今までにも地上波、BS、CSで何度も何度も再放送されているがそれでも飽きない。
録画して楽しんでいるのだが、特に忘れがたいのがクリスマスの二つのエピソードである。
 
一つ目は第五シーズンの「聖しこの夜」。
モティマー・インスタントスープ社長のモティマーは、広告契約を結んでいるラリー・テイトとダーリン・スティーブンスにクリスマスにも働く事を強要する。モティマーはなぜかクリスマスを憎んでいる。
ちなみに、モティマー役のCharles Laneは「奥様は魔女」シリーズにも主に頑固な社長役でちょくちょく登場していい味を出している。調べたら他のテレビドラマにも性格俳優としてよく出ていたらしい。それとフランク・キャプラの映画の常連でもあったそうだ。ちょっと思い出せなかったが。
ダーリン役はディック・ヨークの時代。
さて、モティマーのあまりの横暴ぶりにダーリンは仕事をするのを拒否してしまい、モティーマーは広告契約を解除してしまう。
サマンサはモティマーがクリスマスを憎んでいることを気の毒に思い、モティーマーの家に魔女として現れて北極のサンタのところへ彼を連れて行く。
サマンサとモティーマーがほうきにのって夜空をとぶシーンが美しいとともにおかしい。
モティマーはサンタクロースとも出会うが頑なにこれは夢だと言い張って認めない。
その際、スージー人形というアザが出来る世界に一つしかない人形を知る。
サンタクロースが各家を回るのにもつきあわされる。モティーマーの家の使用人のホーキンスの家族が幸せそうにしているのも目撃する。モティマーは「金もないくせに」と言うが、サマンサに「あなたはお金持ちね、でも幸せ?」と問われる。そしてモティーマーは家に戻される。
翌朝、ダーリンとサマンサと娘のタバサがクリスマスを祝っているところにモティマーが現れる。
すっかり頑固な様子が変わって「家にいると寂しくてね」などともらす。ホーキンスにはクリスマス休暇をプレゼントしたと。
「昨晩は寝れなくてね」、そしてサマンサの方を向いて「奥さんもよく寝れなかったんじゃないかね?」
さらにモティマーは「君たちに謝りたい事がある。」とためらいがちに恥ずかしそうに言うが、サマンサもダーリンもすぐ察してラリーも一緒に皆でクリスマスを祝う事になる。
タバサはサンタからスージー人形をプレゼントされていたのだが、それをモティマーが見つけて「これは世界に一つしかない人形なんだよ」「おかしいな、なぜそれを私は知っているのだろう。」
サマンサがそこにやってきて、サマンサの笑顔、モティマーの不審そうな顔、タバサの天使のような顔、モティマー、サマンサ、モティマーが始めてみせる意外に人のいい素晴らしい笑顔、サマンサのとびっきりの笑顔とカメラが細かくきりかわる。まるで、小津映画のように。
クリスマスソングが流れて終わる。

二つ目は第七シーズンの「水玉姉妹」。
ダーリン(ディック・サージェント)とサマンサは、クリスマスに同じラリーの広告会社で働く黒人のケイス夫妻の娘リサを家に招く。タバサとリサは本当の姉妹のように仲良くなる。
ラリーの会社と広告契約を結んでいるブロックウェイ社長がダーリンの家を訪れるとリサが応対に出て、ブロックウェイはダーリンの娘と勘違いして黒人女性と結婚していると思い込む。そしてダーリンを広告の担当から外すように理由は言わずにラリーに命ずる。
あわてたラリーがダーリン家でホームパーティを開いてブロックウェイも招く。ブロックウェイは自分の勘違いに気づいて、ラリーにダーリンを担当に戻すように言う。
その時のラリー・テイトが立派だった。いつもはスポンサーにゴマをすりまくってダーリンを困らせるお調子者で節操のないラリーが威厳のある態度を示す。
「ダーリンの妻が黒人ではないと分かったから仕事に戻せと言うのですか?」
そしてラリーは自分の姿を鏡でみて確認してからブロックウェイにキッパリと言い渡す。「他の代理店を探してください。我々はおります。」
「君はそんなミリオンダラーの顧客を断れるわけがない。」
「あなたより私の方が驚いているんですよ」、とラリー。
そこへサマンサが現れてブロックウェイに魔法をかける。ラリー、サマンサ、ダーリン、それにブロックウェイ自身が黒人に見えるようにしたのだ。驚き茫然自失としてブロックウェイは去る。
翌朝、雪が降りしきるなか、ブロックウェイがダーリン宅を訪れる。彼の肩のコートの上にも雪がかかっている。
ブロックウェイが昨晩の傲慢な調子とは打って変わって「昨晩寝れなくて、ここに来ずにはいられなかったんです。」
そこにはダーリンとケイス夫妻もいる。
(以下、もとの英語版と吹き替えか全然違うので原文の内容を意訳で紹介する。吹き替えでは当たり障りのない内容になっていて残念だ。)
ブロックウェイが一人で真摯な様子で話し続ける。
「どうしても、皆さんに言っておきたい事があるんです。昨晩、ここで変な体験をしたのですが、そのおかげで私は自分自身の姿にやっと気づいたんです。私は人種差別主義者だったんです。いや、あからさまなタイプのレイシストじゃない。私はもっと卑劣で卑怯な差別主義者でした。あまりに卑劣すぎて自分でも気づいていなかったんです。」
それだけ言ってブロックウェイは去ろうとする。そこへサマンサがすかさず「お食事は?Before dinner?」
ここはちょっと泣いてしまう。絶妙のタイミングと言い方でエリザベス・モンゴメリーのサマンサが言うので。
皆がブロックウェイのことを許して、ブロックウェイも感激する。
サマンサとダーリンがキスするシーンをカメラアングルが変わって映し出し、雪とクリスマスソングで終わる。

どちらも、本当に素晴らしい話なのだ。特に「水玉姉妹」の方。難しい差別の問題を絶妙なユーモアにくるんで、なおかつ率直に真面目に見せてくれる。まだ人種差別が深刻な時代のテレビドラマなのだが、同時にあの時代のアメリカ特有の楽天的な良心も垣間見える。
そして、何よりも抜群のユーモアのセンスだと思うのは、キリスト教においては本来呪われた存在であるはずの「魔女」witchが、クリスマスで良心を祝う存在の役割を果している事。サンタクロースとも友達だったりするのだ。
もしかしたらこういう楽天性に疑問を持つ人もいるかもしれない。でも、私はこういうフランク・キャプラ的な若いアメリカの楽観的な肯定主義が好きである。もはや、アメリカには―いや世界のどこを見ても―こんな余裕はないので。
現実の厳しさをみつめつつの美しいある夢なのだと思う。
だから「奥様は魔女」はいつまでたっても色あせないのだ、多分。
posted by rukert | テレビ
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