2013年03月27日

木下惠介「わが恋せし乙女」

「肖像」に続いて井川邦子主演作品を見てみた。井川邦子は後年に比べると、ふっくらしていて健康的な美人でこの役にピッタリである。
同じ木下の「野菊の如き君なりき」と似た感じの、若き日の甘き悲しき失恋譚である。「野菊」の方はさらに二人とも若いのだが。
井川邦子と原保美が隣同士に腰掛けて、井川が飲み物をゴクゴクと飲み干して、それが口からこぼれてほいを伝って落ちるところなど、生々しくて若さとある種のエロティシズムを感じる。
それにしても、主役の原保美が柳葉敏郎と感じがよく似ていて驚く。
基本的に若き日の甘酸っぱい恋の物語なのだが、木下演出は相変わらず堅実でスッキリ整理されていて、気持ちよく素直に物語りに入ってゆける。
私自身も若い頃は、映画に「芸術」を求めたりもしたが、今はそういうことにはほとんど興味がない。この映画に限らず、木下映画はどれも気持ちよく観る事が出来る。
井川邦子の恋人役の安部徹が印象的。戦争で足を負傷して普通に歩行できない体になってしまったという設定で、心がきれいで立派で尊敬できる人間という感じがよくでている。
山の中で、若者を集めてヴァイオリンを無伴奏で弾くシーンもよい。
私はまだ木下映画を多く観ていないのだけれども、その中でも「二人で歩いた幾春秋」が一番印象に残っている。すごく地味な題材の映画なのだけれども、その堅実で地に足がついたリアリズムが素直に心に染入ってきた。
その中で、若き日の倍賞千恵子が、佐田と高峰の息子の恋人役で登場するのだが、その優しい心の女性も、この安部徹同様にさりげないのだがとても存在感があった。木下映画では、こういう自然な感じであれながら不思議と訴えかけるところのある人間が登場する。
安部徹が原保美と二人で山で語り合うシーンで、自分の負傷した足を「こんな足でも、かわいくてかわいくて仕方がない。生きているのは素晴らしいなぁ。」と言うところもよかった。素直にこういう部分も受け入れる事が出来るのだ。
posted by rukert | 映画
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