2011年03月06日

山田洋次監督「男はつらいよ 寅次郎頑張れ」第20作メモ



これもとても好きな作品。特に、長崎平戸の部分。

「寅の夢」は、とらやファミリーが成金になる夢。さくらだけは控えめだが、あとは全員堂々たる成金ぶりである。博がぶどうの房をもって現れるが、一体どんな金持ちのイメージなのだろう。そして、食事もミニオケの伴奏つき。「ジークフリート牧歌」ですかと。吉田義夫と岡本茉利の旅一座の父娘も登場して、ラストシーンと形式的につながっている。家族全員が寅を笑って、ある意味、「寅の夢」中でも一番の悪夢かもしれない(笑)。

「江戸川オープニングサイレントコメディ」は、江戸川のほとりでジャム・セッションをしているところに、寅がサックスに柿を放り込んで音が出なくなってしまうパターン。サックスを吹く男の津嘉山正種は、オープニングのレギュラーだ。

もし本当に「押し売りが来た」と通報されて、サイレン鳴らしてとんでくる真面目な警察がいたらイヤだ。

パチンコ屋で寅の隣に座るおばちゃん役の杉山とく子が存在感抜群。寅に「どうだ、ばばぁ」とか言われているし。

満男も結構悪がきになって、源ちゃんに猿回しの猿をさせたりしている。

寅は中村雅俊が大竹しのぶに惚れているのをすぐ察する。そういうところには本当に敏感すぎるくらい敏感だ。

それにしても、当時二十歳の大竹しのぶは本当にうまい。天才である。

個人的には、中村雅俊や大竹しのぶが出ていると同時代を感じる。私は「男はつらいよ」を全部見たのは、渥美清が亡くなってからだった。若い頃はビスコンティに心酔するイヤな映画青年で、「男はつらいよ」なんがバカにしていたのだ。要するに、そういう私の方がバカだったということである。

寅が若い二人の恋愛に興奮しているのを聞いて、博が「そりゃ、まずいな」と真顔で言うのがおかしい。

博が「選手の時はダメでも、コーチになってよくなったということもありますからね。」と言うのがひどすぎる(笑)。

満男と中村雅杜俊が「電線音頭」を歌っている。懐かしい。そういう時代なのね。

「寅のアリア」はデート指南。相変らず笑ってしまうくらい細部まで具体的だ。

あんなに詳しく寅が教えたのに、なんで二人はジャパニーズ・ホラーを見ているんだよ。と。

中村雅俊がガス自殺を図るシーンはヒッチコック映画のようなサスペンス。マッチに火がつかずドキドキして、下の皆に絵が降りてきていつ爆発するかとハラハラする。寅がふうーっと息をぬいたところで爆発する。そのタイミングも精密に計算されている。

御前様が「寅が逃げた」と「猿が逃げた」をかける。寅が「猿が腹をこわしている」と「中村が失恋している」をかけてからかった報いで、こういうところも凝った脚本だ。

寅は、まだマドンナも見ないのに、中村の姉が独り者だと聞いてだけでソワソワしだす。もう見境なしの惚れっぽさじゃないですか。

神父役の桜井センリが素晴らしい。船長に寅が藤村志保に惚れているというのを勘違いして自分が言われていると思って勝手に告白するおかしさ。その妙にオカマっぽい動き。道路を横断する際に、神父と船長が同時に左右を確認する動き。動きだけで笑わせてくれる。

おいちゃんが、寅がマドンナに惚れた状況を冷静に推測するところが妙におかしい。

寅が藤村志保と二人きりのところを妄想する「寅のアリア」は、本当に一人でやっていて、最早ほんまもんの妄想である。

中村が「ほれとるばい」といって、さらに桜井センリが「ほれとるばい」を重ねるお得意の脚本パターン。

さらに、満男が伊勢海老をザリガニだというのはまだしも、博までザリガニだと重ねる同じパターン。博まで、と意表をつく。

平戸の夕焼けが美しい。「男はつらいよ」は夕焼け映画なのだ。

シューベルトの菩提樹を歌う大竹しのぶのおじさんはいい声していますね。なんという役者なのか確認できず。

マドンナが寅の気持に無頓着で気づかないパターンは多いが、それを弟の中村が教えて姉を諌めるという初めてのパターン。普通に考えると気がつかないのが不自然だけど、映画の設定上仕方ないのか。

藤村志保が「寅さんはね、あんたの考えちょるより、もっともっと心のきれいか人よ」というのは、これまた真実を語っているのだ。そして、さくらも「そういう気持を知ったら満足するはずよ。兄ってそういう人間なのよ」というのも、また真実。本当に寅というのは本当に得がたい素晴らしいキャラクターだ。と素直に思う。

桜井センリが中村の恋人が来ると聞いて、子どもたちに丁寧に挨拶しながら、いてもたってもいられなくなって、最後は猛然とダッシュする動きのおかしさ。本当に素晴らしい役者だ。

柴又は珍しく雪の正月だ。

ラストで寅が坂道を降りてきて、お地蔵様にみかんをのせるあたりの絵の構図が、なんとも印象的である。そして、旅一座との再会はラストとしては一番安心感がある。寅の生き方の仲間、同類だから。












posted by rukert | Comment(0) | TrackBack(0) | 男はつらいよ
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