2011年03月03日

山田洋次監督「男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け」第十七作メモ



芸者ぼたん役の太地喜和子のマドンナが素晴らしい。寅と同じ種類の人間で、リリーのライバルになってもおかしくない存在で、彼女がマドンナの続作がつくられなかったのが残念なくらいである。

「寅の夢」は、ついにジョーズ篇。おいちゃんも、おばちゃんも、満男も食われ、源ちゃんが下半身を食われた残酷図までうつされ、さくらも気がふれてしまい、ジョーズに食われて、寅がさくらのちぎりれた足二本をもつ超残酷シーンが。といっても、源ちゃんもさくらも、はっきりつくりものと分かるように撮られているわけだけれども。倍賞千恵子の演技がうまくて妙に感心してしまう。そして、寅が起きると釣りをしていてちっちゃな魚を釣りあげるが、かみつかれるというジョーズとつながっているオチ。本当に脚本の芸が細かい。

オープニングの「江戸川沿い騒動」は、子どもとチャンバラして、親が怒って大騒動に発展する篇。寅がきっかけで、本人の関係ないところで騒動になるパターンはこのあたりからか。

寅だけが宇野重吉じいさんをかばって優しい。いや、「寅のアリア」でみせる老人への思いやりはマジで勉強になります(笑)。笑いに紛らせているけど、寅は単なる情けない失恋男ではなく天使なのだ。

大雅堂の主人の大滝秀治が実にうまいですね。ああいう古本屋の主人は本当にいそうだ。

絵が7万円で売れてさくらにみせたら、「お兄ちゃん、泥棒だけは」と泣かれるのは分かりやすいけど、やっぱり笑える。倍賞千恵子の表情が真剣そのもので。

旅一座の「花形女優」の岡本茉莉が宇野重吉宅のお手伝いで出ている。

龍野の風景が美しい映画。特に俯瞰の屋根がぎっしりの絵が印象的。

観光課長役で桜井センリがシリーズ初登場。「男はつらいよ」で、個人的には一番好きなバイプレイヤーである。ここでも、不思議な歌声や踊りを披露している。すごく芸達者で独特の雰囲気をもった役者だ。インチキ神父みたいのをゃっていたのも、よかった。

太地喜和子は本当に派手で華がある。寅のイモがころげて、寅と笑いあう出会いからして素晴らしい。笑い声が豪快で。明るくてキップのいいい芸者役がはまっている。桜井センリが「龍野代表する役者」だというのも納得。「溶けて流れりゃ皆同じ」という歌の文句もいい。

太地喜和子が普段着の派手目な様相で、塀に挟まれた狭い路地を小走りにこちらに走ってくるところは映画的なシーン。そして、太地喜和子はスタイルが抜群である。

「奮闘篇」でマドンナの花子を好演していた榊原るみが、お手伝いのチョイ役で登場する。

龍野の夕焼けの連続カットが美しい。江戸川の土手の夕焼けもよく出てくるが、「男はつらいよ」は夕焼け頻出映画だ。

太地喜和子登場のテーマ音楽もなんだかピッタリである。

寅とぼたんが、とらやで再会するシーンは、寅とリリーと雰囲気がよく似ていますね。

寅に、「博にぼたんなら三日で飽きちゃうよ」といわれて、「そんなことはありませんよ」と真顔でいう博の演技とそれを見つめるさくらが微笑ましくて笑える。

マドンナが深刻な金銭トラブルに巻き込まれるというパターンは結構珍しい。博の表現を借りると「はじめてのケースだ。」

佐野浅夫は憎憎しくて素晴らしい。どうでもいいけど白いベルトがダサい。

タコ社長もいいとこをみせる。金を取り戻せなくて寅に「気が済むならなぐってくれ」というところなんざ泣かせる。社長の髪の毛が乱れて前に垂れているのが苦労をしのばせます。細かい演出。

寅が、刑務所行き覚悟で佐野を殴りに行くシーンは泣かせるが、ちゃんと行き先が分からないというオチをつける緻密な脚本(笑)。

ぼたんのトラブルに気をとられて、寅とぼたんの恋はめだ゛たないまま終わるし、特に寅が失恋するわげてもない。でも、さくらがいうように「ぼたんさんはお兄ちゃんがすきなんじゃないかしら」である。何も起こらずに終わるので、本当にこの二人の続編を見たかったと思う。

宇野重吉に寅がたんかをきるシーンも普通にいい。そして、宇野重吉の後ろ姿で全てを表現する演出。

宇野重吉がさくらに方角を聞くシーンが、ラストの寅とぼたんのシーンとつながるお得意の脚本パターン。そういうところを観る楽しみがね「男はつらいよ」シリーズにはある。

ラストの龍野での寅とぼたんのシーンも素晴らしい。渥美清にも負けない圧倒的な太地喜和子の存在感。龍野の俯瞰の屋根の絵。この作品は、「映画」としての完成度も高くて秀逸である。何度も言うが、寅とぼたんの本格的な恋もみたかった。

















posted by rukert | Comment(0) | TrackBack(0) | 男はつらいよ
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。