2011年03月01日

山田洋次監督「男はつらいよ 寅次郎相合い傘」第十五作メモ



「男はつらいよ」の代表作なると、やはりこれになるのかもしれない。リリーマドンナの中でも、これが一番いいし(他もいいけど)、作品としての完成度も高い。渥美清も元気一杯で、若さと円熟の両面のよさがある。シリーズ作品としても、コメディ色の強い初期作品と真面目なところも多くなってくる後期の境界線にあってバランスがいいし。

「寅の夢」まで出来がよくて、この「海賊船の夢」は最も印象的なものの一つだ。米倉斉加年と上條恒彦が、この夢のためだけに出演しているのも豪華。吉田義夫も一度お休みだったが、無事こーーい奴隷船長で復帰。寅はタイガー、さくらはチェリーだけど、満男は満男で「そのままなんかいっ」と思わずつっ込んでしまう。

夢から覚めると映画館で、寅が映画館のオバチャンに「面白かったよ」というと「あぁ、よかったね」というのが場末の映画館ぽくってよい。

オープニングはさくらが江戸川のほとりを自転車で走るパターン。寅は出てこない。

リリーは、「忘れな草」では化粧も濃くて素人じゃないことを強調されていたが、この回では髪もショートでサッパリしてきれいだ。

寅が、夕方商売が終わってトボトボさびれた町を歩き、カメラがパンして綺麗な夕焼け空というシーンがいい。今回まとめてみていて、旅先の街並みや自然の中の寅の絵がどれもすごくいいと思った。

船越英二と渥美清の対照的なキャラクターがとてもいいわけだけど、船越英二はこの作品だけだったのが惜しい感じ。改めて観ると、船越は背も高くて堂々として男前でリリーがほれるなら普通に考えるなら寅じゃなくて船越パパなんだけど、見事に人畜無害な中年男のオーラに成りすましていて、二人を邪魔していないのが見事だ。

おばちゃんが、嫌味な船越妻の前で「ございませ」言葉をつかうとこがおかしい。そしてKY社長が品のない無神経発言をするいつものパターン。

ラーメン屋でパパをはさんで寅とリリーが再会する名シーン、この二人の嬉しそうな様子は演技をこえてますな。本当に相性がいい。

寅はリリーに足をあっためさせてくれといわれて断るくせに、あとで「いつものように足をあっためてやろうか」と家族の前ではふくのだ。悲しい男である(笑)。

寅、リリー、パパの夕焼け海岸石投げのシーン美しい。さりげない自然シーンが多いですね。

パパが万年筆を売って寅がサクラをするシーン。あんな派手なサクラじゃすぐバレルだろっと思うが、そういう細かいことは気にしないでおこう。「ママじょうやも一本買ってあげたら」はいいですね。

寅に「男に捨てられたんだろ」といわれた際のリーの悲しそうな顔はいいですねぇ。あれは寅じゃなくてもほれてまうわ。

寅とリリーが再会して謝りあうシーンは、見ていて恥ずかしくなるくらい仲いいですね。

寅が団子屋なのに客を断ってしまうのはシリーズ中、何回あったのだろうか?

博のうたは見事にひどい。そしてリリーが歌うバックで盛り上げる寅がかわいい。

階段を上がるリリーを寅が見送るところでのリリーの甘えっぷりもかわいいことこの上ない。というわけで、観る側もどんどんリリーにはまってゆくのだ。

「寅のアリア」の「リリーが劇場で歌う」は本当に素晴らしい。さくらさんが「リリーさんに聞かせてあげたかったな」というのだが、BSで全作品放映された際に、特番で本当にこのシーンを浅丘ルリ子に見せたら、浅丘が涙を流したのはすごかった。映画と現実が交錯してしまっていた。

パパがさくらに「寅さんとりりーさんの結婚式の時には呼んでください」とうのを聞いた寅の喜びの表現のおかしくて見事なこと。あんなに人は無邪気に喜べるものだろうかという。そして、ゲストほ夕方の江戸川の土手道で見送るシーンはシリーズ通じても、どれも美しい。

そして伝説のメロン・シーン。「男はつらいよ」全作を通じても白眉中の白眉である。寅が「わけをきこうじゃねえかよ」と切り出す間や表情が絶妙すぎていきなり腹をかかえる。「どうしてみんなのつばきのついたきたねぇ食いかすをオレはくわなきゃならねぇんだい」と続くその表現がいいですよね。そしてリリーが逆切れするあの爽快感(笑)。博がすっとしたと言うのも当然である。さらに、それに対して寅が「かぁぁぁ、憎たらしい口ききやがって、これでも女でしょうか」というところは何度見ても笑ってしまう。あの言い方。「男はつらいよ」全体を通じても最も笑える寅の名セリフだ。

寅とリリーの相合傘の名シーンも、キスをするわけでもなけりゃ愛の言葉を交わすわけでもないけど、日本映画史上、いや世界映画史上でも有数のラブシーンである(笑)。
さくらがリリーに寅のかわりにプロポーズする際のリリーの表情のよさといったら。いつもは陽気なリリーが初めてもみせる表情である。寅は絶好球を見のがすわけだけれど、あの状況じゃ仕方ないというところもある。八千草薫に逆プロポーズされた際は腰を抜かして、今回は「冗談だろ」といってしまうが、常に寅は間が悪い(笑)。シリーズが続くためには結婚させるわけにはいかないというのもあるのだろうけど、個人的には寅がリリーと結婚できないと思う気持がよく理解できるし説得力もあると感じる。

二階で寅とさくらが語るシーンでは、成瀬映画のような雨と雷。「あいつもオレとおんなじ渡り鳥よ。腹すかせてさぁ、羽けがしてさぁ、しばらくこのうちに休んだだけのことだ。いずれまた、パァーと羽ばたいて、あの青い空へ、なぁさくら、そういうことだろ。」
文句なしの寅の名セリフ。そしてさくらが頬に一筋の涙を流して「そうかしら」と応えることできちんと完結する。

船越パパが来て、さくらが「リリーさんと兄は本当に仲のいい友達だったんじゃないかって、そんなふうに」と言う。まさしく。男女の仲さえ超えてるところがある二人だったのであった。

海岸に旅行カバンが置かれていて、海を後姿で見つめる寅。この作品は全体を通じても自然のシーンが美しい映画だった。










posted by rukert | Comment(2) | TrackBack(0) | 男はつらいよ
この記事へのコメント
管理人様

はじめまして、吉川孝昭と申します。

「寅次郎相合い傘」のレビュー、深い共感と共に
読ませて頂きました。
簡潔で、的を得たご感想に頷くことしきりでした。
何よりもこの映画に愛情をお持ちなことが
行間からにじみ出ていますね。

昨日5月10日
新橋文化劇場で「寅次郎相合い傘」を2回
見てきたばかりなもので、
つい見知らぬ方にコメントしてしまいました。

おいおい他の作品のレビューも
読ませていただこうと思います。

突然のコメント
失礼いたしました。
Posted by 吉川孝昭
ブログを完全に放置していたのでコメント承認が大変遅れて失礼いたしました。

相合傘は本当に男はつらいよシリーズ中でも傑作ですよね!
Posted by rukert
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。