2011年02月24日

山田洋次監督「男はつらいよ 寅次郎夢枕」第十作メモ



個人的にはシリーズ中、大変好きな作品。マドンナが寅の幼馴染という反則設定で、本当に寅に結婚させてやりたいと親身に思わせる?珍しい一品。

「寅の夢」は、マカオの寅篇。前田吟がすっごい二枚目ほ抜けぬけとやっているのが超おかしい。そして、吉田義夫の味にほとんくど麻薬的にはまってしまうのであった。

渋柿を食った顔芸だけでも絶品で、渥美清は十分笑わせてくれます。

オープニングの江戸川沿い騒動は、ベビーカーを転落させる篇。寅も、まだ素直に謝ったりしている。

家族で寅を「優しい」と世辞で言うのは、皆で本当のことをいっているわけなんだな。そして、さくらさんが寅が言うセリフがおいちゃんの言う通り泣かせる。前作では微妙なキャラチェンジしていたさくらさんだが、本作では基本的に元に戻っている。

寅が「源ちゃんが、祈りを込めてついているんでしょうねぇ」と妙なことを言うと思ったらちゃんとオチが。あの落書きは、佐藤蛾次郎さんが書いたんですかね。違うか。

信濃路のシーンでは、ビバルディの「四季」が効果的に使われている。音楽担当が、山本直純で、彼は小沢征爾のご学友なのだ。だから、「男はつらいよ」シリーズではクラシックが意外に効果的に使われていた。

田中絹代登場。端正で気品があって威厳のある演技、存在感だけれども、これだけでは勿体ない.田中の凄さがちゃんと伝わるだろうかと思う。少しだけの登場なんで仕方ないけど。

登登場。寅の仁義をパクッたりしている。ラストでも登場。最初あるいは最後を締めるのは旅する人間の寅の同類としての、登や旅一座や、後の関敬六がやっぱりふさわしい。

他にもシリーズの随所で活躍する米倉斉加年が生真面目な大学助教授を怪演。寅の部屋に男が泊まる初めてのパターン。

さくらさんが、「おばちゃん」と呼ばれて、源ちゃんに笑われるシーンも。もう第十作で、時の流れを感じさせられますな。

マドンナの八千草薫が、とてもいいと思う。他ではどういうイメージの役が多いかよく知らないが、ここでは庶民的で気さくで優しくて美しくて気がきく女性になりきっている。本当に寅の嫁にピッタリではないか。

ちなみにも、。名前も千代、お千代さんと現実的な名前だ。だいたい、ここまでのマドンナは、冬子とか夏子とか歌子とか花子とか、ちょっとふざけた名前で寅の手には届かない非現実な存在であることが暗示されていたが、きわめてリアルな女の名前なのである。

寅の「さいずめインテリだな」の名言登場。

米倉斉加年が二階でかける音楽も「四季」。こういう「天丼」パターンが、実は「男はつらいよ」シリーズでは多い。この作品では、寅が恋の苦しさを語るセリフを、米倉斉加年が繰り返すところとか。

寅が怒って「てめえらの、そのつめてえ地獄の鬼のような眼差し」という表現がおかしい。これは脚本なのかしら、渥美清のアドリブなのかしら。

寅とお千代の出会いのシーンがとってもいい。店の暖簾ごしに行き来して、「とらちゃん」「ちよぼう」と呼び合う。そして八千草薫の本当に懐かしそうな表情。いいですね。寅の言うことがすごい。「おでこの出っ張ったらっきょみたいなおかしなツラした娘だったよねぇ。結構見られるようになったじゃねぇか。おまえ(さくら)と手握って二人で歩いていると、デカらっきょうとチビらっきょっうって、よくおまえたちからかわれていて泣いていたじゃねぇか。」そして、お千代がなんと怒りもせずに嬉しそうでこう言う「そのたんびに、とらちゃん棒きれ持って飛び出してきてね。」なんだよ、この幼馴染の世界。寅はお千代の寝小便のことまで言うが、お千代は笑って平気である。博の言うように「はじめてのケース」だ。そして、寅が本当につきあっても大丈夫なのではないかと思わせる。寅をよくわかっているから。

米倉斉加年が、お千代に一目惚れした際の、寅と源ちゃんの反応。子供だよ。かわいい。

そして、米倉斉加年が二階でクラシックでなく山本リンダの「もうどうにも止まらない」を歌いだす。こういう細かいギャグまでこだわっている。

寅に博がさくらにプロポーズした頃のことを言われて、照れるさくらさん、かわいい。

八千草薫と倍賞千恵子の美容室のシーンは、個人的には「男はつらいよ」全体を通じても最も好きなものの一つ。お千代が「照れ屋なのよ。あなたのおにいさんは。小さい時からそうだったわ。人がみてると、いじめたり、悪口いったりするけど、二人っきりになると、とっても親切よ。」なんて寅のことをよく理解しているのだろう(笑)。
そして、寅登場。言うことがすごい。「なんだい、この店は漬物屋か。らっきょうが二個そろって、何の相談しているんだよ。ったく、やる方もやる方だし、やらせる方もやらせる方だよ。髪の毛なんかいじらないで、おでこけずったらいいじゃねぇか。以上。」さくらは軽く怒るが、お千代は「照れ屋」だと分かっているから笑っているのだ。寅の結婚相手として、これ以上理想的な人はいないじゃないですか。
ちなみに、八千草薫と倍賞千恵子の本当の容貌と関係しているのが、山田洋次のひどい、というかすごいところではある。

お千代が、親権のない子と会う表情もとてもいい。そして、お千代を晩飯に招待して、息子に関する話題を言わないように申し合わせるのは、第二作で寅に母親の話題を言わないようにするパターンの繰り返し。無論、博が新聞を読むと子どもの話題だったり、テレビをつけると子どものニュースという予想とおりの展開。
さらに、寅が歌を歌って、からすで゛かわいい七つの・・」で、「あっ、これゃ違うんだな。」、さらに「お馬の親子は・・、はじめからダメだ」ちという間が抜群で爆笑してしまう。

かと思うと、お千代が泣いて悲しんだのかと思いきや、寅たちの気持が嬉しいというところで一転して泣かせる。正直、私などは号泣してしまった。こういう、意表をつく演出が山田監督は好きですね。

、そして。寅とお千代の逆プロポーズのシーンも最高である。寅の言うように゛お千代ぼうはカンがいいから」、寅の言葉を待っている。そして、例の「冗談じゃないわ。」と優しく真剣な眼差しで言う名セリフ。崩れ落ちる寅。さらに、すぐに寅の様子を見て「冗談よ」と撤回するお千代。なんて出来た優しい女なのだろう(笑)。いや、本当に真剣に寅と結婚したらうまく言ったんじゃないかと思うベストワンである。リリー以上に。

お千代は、寅が去った後にもさくらたちに寅に振られたとちゃんと正直に言う。ところが、寅は旅先で登たちに「逆に振ってやった」とふくのだ。何と居皮肉で素晴らしい演出だろう。

というわけで、寅はフリーのままで無事シリーズ続行。次作でついにリリーとめぐり合うのだ。











posted by rukert | Comment(0) | TrackBack(0) | 男はつらいよ
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