2011年01月26日

成瀬巳喜男 「乱れ雲」メモ



成瀬の遺作。
司葉子は相変わらず、かわいくて美しい。相手役は加山雄三。加山雄三は黒澤の「椿三十郎」や「赤ひげ」では本当に素晴らしかった。しかし、こうしてすっかり「加山雄三」になった加山雄三は、正直私には濃すぎる。成瀬映画でいうと森雅之画懐かしくなる。なぜか、私はあの時代の映画や俳優が好きなのだ。勿論、個人的な趣味の問題に過ぎないけれど。
ストーリーは、ある女性が自分の夫を自動車事故で、過失とはいえ死亡させた男と憎みあいながら、いつしか惹かれあい、ついには愛しあうようになるという物語である。こう書くとちょっとメロドラマ的だ。但し、結末は道徳的である。きちんと描けているとは思うけれど、何となく物足りなさも感じる。「浮雲」の非道徳的な突き放した完全に男と女だけの世界が懐恋しくなる。時代的に、もうそういう映画を撮るのが不可能だったのだろうか。
加山と司がタクシーにっのて旅館に向かう際に、踏み切りで待つシーンが、ちょっと印象的。何も会話は交わされず、加山と司の表情、タクシー・ドライバーのミラー越しの目、踏み切りの前で止まる車が映し出される。映画的な緊迫感をかもし出すシーンだ。但し、その後、過去を思い出させる自動車事故の現場のシーンになって、それが説明的で少しガッカリするのだけれど。
音楽は、武満徹。この晩年の成瀬の映像とうまくあっているかは微妙だと感じた。
成瀬の場合、やはりカラーよりもモノクロがいいと感じる。例えば、小津などはカラーでの独特な色彩のこだわりと感受性がある。しかし、成瀬の場合は、白黒テレビがカラーテレビに変っただけという感じだ。また、役者や時代背景も、少し前の時代のほうがしっくりする。成瀬は、日本映画の黄金期の人だったのだと思う。そして、この「乱れ雲」よりも、ずっと世代的には後の人間の私も、なぜだか、この時代には違和感を覚えて、それ以前の時代が恋しいのだ。どうしてなのだろう。
posted by rukert | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画
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