2011年01月24日

成瀬巳喜男「晩菊」雑記



杉村春子の金貸しのオバサン、婆さんがはまりすぎ。本当に憎たらしくて素晴らしい。ただ、上原謙の前だけだと、「女」になりかけるのだけれど、杉村だと自立心が強烈過ぎてちょっと似合わない。例えば、同じく出ている沢村貞子なら、そういう一面はうまくやりそうだが、それだと金貸しとしては物足りなくなってしまうか。とにかく難しい役だが、偉大な役者の杉村がやりきっている。上原との出会いの期待と幻滅のシーンは、内心のモノローグの手法も使っていて珍しい。幻滅におわる過程の描き方は、成瀬らしくて見事だ。
1954年の作品。沢村貞子もなかなか美しく撮れている。1960年の小津の「秋日和」だと、もう結構なオバサンに見えるのに、こちらだとまだ色気のようなものもある。役の違いもあるが、どうも小津より成瀬の方が女性を美しく映すような気がして仕方ない。
有馬稲子が、現代風の娘をやっている。演出なのだろう、ラーメンを少し品なくすすらされたりしているのだが、とてもかわいい感じだ。小津の「彼岸花」では品のいいお嬢さんだったが、こっちの方がよほどいいと思う。もっとも、趣味の問題で、小津のように上品な感じの美しさで女性を撮ってくれた方が好きだという人もいるのかもしれない。「東京暮色」ではどんな感じだったかよく思い出せないので、また見てみよう。
しかし、この映画では、芸者あがりの、細川ちか子と望月優子が、とてもいいと思った。細川は人がよくておっとりしていてどこか上品な女、望月は元気で明るくて庶民的な女。それぞれ、現代的な息子と娘をかかえていて、その最底辺の生活を受け入れて諦念を抱きながらも、しっかり生きている感じがとてもよい。それぞれの子供との関係も、問題を抱えながらあたたかく描かれている。
細川が酔って、どんな人生を過ごそうとも、所詮は一場の夢だと語る部分は印象的だ。望月の方は、若い娘のマネをしてモンロー・ウォークをしてふざける場面がいい。
杉村のかつての心中相手も登場したりするが、何か起こりそうで特に何も事件は起きない。あくまで、日常の暮らしと登場人物の心持を淡々と描いて、しみじみとさせる佳品である。
posted by rukert | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画
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