2011年01月20日

原節子主演、今井正監督「青い山脈」



原節子は、女学生とバスケットボールをするシーンで登場する。理想に燃える女性教師役がはまりすぎだ。ちょっと、雰囲気が宝塚的でもある。杉葉子と踊るシーンとか。
1949年の作品だが、現在の、というよりは古きよき時代のテレビ・ドラマのようだ。理屈ぬきに楽しいし、どのキャラクターも分かりやすく性格づけられている。メガネ娘のおしゃまな若山セツ子。おっとこ前な池部良。伸びやかな女子高生、杉葉子。大らかな大物で正義感の強い龍崎一郎。意地悪女子高生の山本和子。人のいいとぼけた伊豆肇。いい味出してる真面目で純朴な藤原釜足等々。
一応は町の因習的な道徳と民主的な自由な思想の対立というテーマだけれども、深刻にならずに予定調和の「テレビ・ドラマ」として楽しめる。杉葉子に意地悪する山本和子にも、最後にはちゃんと和解の場面が用意されているのだ。
原の出演した、小津、成瀬、黒澤といった正真正銘の「映画監督」の作品を見続けた後では、軽く感じられるけれども、日本の「テレビドラマ」というのも独特のスタイルと伝統をもった素晴らしい世界である。両者に差別はないし、どちらも深く楽しもうと思えばいくらでも深く楽しめる。この「青い山脈」は、日本独特のテレビドラマ(映画でもいいが)の先鞭となった作品だと感じた。理屈っぽくいうとそうなるが、とにかく見ていて楽しくて、すっかりいい気分になったのである。
それと、何と言っても芸者の梅太郎を演じる木暮実千代が絶品である。実に女性らしくて色っぽい。沼田医師と一緒に自転車に乗ってきわどいジョークをいうシーン、初めて原節子を見てライバルに感心するシーン、酔っ払って威勢良くグチるシーン、理事会での悪役教師を震え上がらせるシーン、どれも素晴らしい。この映画は、なんとなくテレビドラマ的なところがあって、場合によっては原節子の登場シーンでもそうなりがちだが、木暮実千代が出てくると見事に「映画」になるように感じた。その出来のよさは原節子を、ちょっとくっているくらいである。溝口の「祇園囃子」でも本当によかったが。
この作品の役割がはまりすぎることでも分かるように、原節子は全然本来伝統的な日本女性のタイプではない。役ということでなく、原の場合はスクリーンに映るだけで、完全に存在として「個」の姿になるのだ。それは、男性の俳優でもそんなにないことだろう。小津や成瀬の映画の中の女性らしい姿のイメージが強すぎるけれども、本来欧米の映画の中で自分をしっかり主張する役割が似合う人だったような気がする。そういう映画は、当時の日本にはなかったけれども。だから、原のキャラクターの本質を一番よく見抜いて生かしたのは、黒澤明の、ある種異常な二本だったのかもしれない。
この「青い山脈」は、そういう役としてはピッタリだけど、こういう原の特質を深く掘り下げて描く「映画」が残っていないのは、少し残念な気もする。
ちなみに、ラストで丘に座って微笑む原節子は、これは文句なしにめっちゃきれいです。
posted by rukert | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画
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