2011年01月17日

成瀬巳喜男「驟雨」感想

amazonのリンクをはろうと思ったら見当たらない。この名作が・・、原節子が出ているのに。ちなみに、私はスカパーの映画チャンネルで放映した際に録画しておいたものを改めて見たのである。
1956年の作品。原節子36歳が、倦怠期の主婦を演じているのだが、十分若々しくて美しい。小津の「秋日和」で、佐分利信と中村伸郎、北竜二の不良オヤジ三人組が未亡人の原節子について「あの色気は・・。」と言い合うシーンがあるが、まさしくそんな感じだ。但し、この「驟雨」の方が全然よい。年齢的にも。
佐野周二と原節子の倦怠期気味の夫婦の日常を、さりげなくコメディタッチで描いた佳品である。この二人は、小津の「麦秋」で会社の上役と秘書の間柄だった。さこでは佐野は、明るく陽気な役柄だったが、ここではすこし神経質で弱いところのある男を好演している。
原節子のほうは、本当に普通の主婦である。まぁ、当然「美しい」という設定だが、気が強くも弱くもなく、外交的なところがあるかと思うと内向的なところもあり、夫に献身的に尽くすというわけでもなく言いたいことも言うが別に仲が悪いわけでもない。要するに、ごく普通の夫婦で、こう書いていて演じるのが結構難しいのではないかと思うが、原はここでもごく自然に役に成りきってしまっている。
そういえば:香川京子も原の姪の役で登場する。「東京物語」でも、二人は似たような関係を演じていて、本当に小津映画と成瀬映画は色々かぶっている。
ただ、成瀬映画の特徴で、女性もそれなりに女性らしい自己主張をするので、原節子の魅力がよくでている。「山の音」でも書いたが、原節子を美しく魅力的に撮る点では、個人的には小津より成瀬に軍配をあげたい。そして、ここでも、「山の音」とは全く違うキャラクターをも見られて楽しい。
香川京子が新婚の夫の無神経さをさかんにこぼすと、原は同情して佐野はニヤニヤしてきいている。男と女の感性の違いが出ていて面白いシーンだが、こういうのも小津的でない成瀬的な世界だ。
そういえば、小津映画では、親子関係が軸となる作品に名作が多い。こういう、基本的には他人同士の夫婦の関係は人間的過ぎて苦手だったのかもしれない。そして、成瀬はこういうゴタゴタした男女関係を描くのが得意中の得意なのだ。
ただし、本作品は名作「浮雲」のようにシリアスでなく、あくまで大人の趣味のいいコメディ調で、男女の微妙なズレを軽妙につきはなして描き出している。原節子が出演した成瀬作品では一番好きだ。
背後には、ピアノのメロディが効果的に使われている。ラストの夫婦で、佐野がオタオタしながら、原がしっかりして堂々と風船を打ち合うシーンが何とも印象的だ。そもそも、原はそういう女性上位?というか、男よりもよっぽどしっかりした女性が似合う役者でもあった。
posted by rukert | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画
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