2009年03月14日

溝口健二「名刀美女丸」



溝口が戦時中に「生活のために作った」映画であり、欠損部分もある。テーマも、親の敵を娘が討つために、そのための日本刀を伝統精神により花柳章太郎の刀工が必死に作るという話。テーマからして溝口に合っているとはいえないし、溝口信奉者でもほめるのはちょっとためらうという映画である。はっきりいって失敗作。
特に、刀を刀工が必死に作ろうとして、精魂尽き果てて倒れそうになるところに、娘役の山田五十鈴,が生霊のように画面に現れて手伝うシーンには、完全に笑ってしまう。C級映画に、時々とんでもないのがあるが、ほとんどそういうレベルである。
山田五十鈴,の出演作では「浪華悲歌」が素晴らしかっただけに残念だが、彼女の若い時というのは確かに素晴らしい。私などは、かなり年齢がいってからの彼女しか知らなかったのでとても新鮮ではある。
冒頭のシーンで、山田と父親が、剣道の稽古をするシーンは良い。面をつけたままの山田のものすごい気合の声、父親が遠慮しないで打ってきなさいといい、実際に思い切り面を入れてしまい父親がクラクラして、心配した山田が面を取るというあたりは、溝口らしさの片鱗を感じる。また、ラストで仇討ちを遂げたシーンで、刀工の花柳章太郎が「一生この刀をあなたの元に置いてください」というと、山田が「あなたも一緒にずっと置いておきたいです」と照れたように言うあたりも、溝口らしい。本当にほめることが出来るのは、それくらいなのだ。
溝口がこういう駄作も平気で作ってしまう監督だったというのも、らしいといえばらしい。よく言われるように、実生活では決して人格円満というタイプではなかったし、完璧な人間でもなかったようなので。
posted by rukert | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画
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