2011年03月02日

山田洋次監督「男はつらいよ 葛飾立志篇」第十六作メモ



地味な作品という印象だったが、改めて見ると特にとらやファミリー関連シーンがシリーズとして練れてきていて結構笑った。

「寅の夢」もどんどんエスカレートしてきて西部劇篇。いきなり、倍賞千恵子が酒場で歌う。米倉斉加年と上条恒彦が前作に続いて夢出演。吉田義夫が西部劇だろうがなんだろうがいつもの調子である。渥美清の四角い顔のガンマンは理屈ぬきにふいてしまう。

オープニングは、野球のボールを草むらのカップルにぶつけてしまう篇。デブの大漢がニュッと出てくる凝ったつくりが意表をつく。

桜田淳子が毎年500円だけ送ってくるというと、おばちゃんが真顔で「やっぱり寅ちゃんかねぇ」というのが妙におかしい。他にもおいちゃんが「こいつはバカだけどウソはいわねぇ男だから」、おばちゃん「そうなのよ」とか、真顔で言いたい放題である。

寅がおゆきの思い出を語る「寅のアリア」はなかなか泣かせる。そして、そのいい話の後に家族がまたひどいことを言う。博「でも、結果が違ったからよかったんでしょう。」、おいちゃん「そっか、ホッとしたわけか」、社長「不幸中の幸いだよな」、全員でワッハッハッハ。寅もすごいひどいこと言われてるし。こういうとらやの家族芸が絶妙な作品である。寅が怒っていうセリフもいい。「歯、全部むき出してゲタゲタ笑いやがって。入れ歯だったら落っこちるぞ。おまえたちは、みんな悪魔か。」悪魔って(笑)。よくでくきた脚本である。渥美清のアドリブも入っているのかな。

ついに御前様まで、寅がほれるのに心配して「こまった」と言い出す。寅やファミリーも勿論、おばちゃんまで「こまった」と御前様の言葉を繰り返すのだ。この作品は寅が言われ放題である。

大滝秀治は常に大滝秀治ですね。

やっぱり寅に言わすと「きっちゃてん」であり「こーしー」である。池内淳子マドンナの回と同じく。

樫山文枝マドンナに寅が喫茶店で色々教えたと聞いた、下條正巳おいちゃんの「かぁぁ」という反応が笑える。下條正巳おいちゃんもスタイルを確立させつつある。結構江戸っ子の毒舌でね。

寅のムカデの足の話が結構おもろい。とらやファミリーが皆で笑うシーンはよくあって、時々そんなに面白くない話で笑っていることもあるけど、これは本当に面白い。

寅が、勉強するためにめがねをかけるのを博に本気で叱るのが笑える。博まで、寅の話をききながら、おいちゃんみたいに「イヤだイヤだ」という顔をする。結構寅が虐待される作品である。

名優、小林桂樹登場。ただ、個人的にはあんまりはまってないと感じた。ちょっとやりすぎているのかなぁ。コメディは難しい。でも小林桂樹も黒澤の「椿三十郎」でのコミカルな役など素晴らしかったけれど。やっぱり渥美清は偉大だ。

「男はつらいよ」には、寅と対照的な「インテリ」が結構登場するが、常に経験的な智慧の持ち主の寅をひきたたすための存在である。

さくらさんの野球ヘルメット姿が珍しい。

寅の恋敵?の大学教授の小林桂樹もマドンナに振られる珍しいパターン。そういえば警官役で出ている米倉斉加年も大学助教授役でマドンナに振られていた。山田監督も寅と同じで「インテリ」に厳しい?

とらや家族の毒舌は小林桂樹にまで向かう。おいちゃん「あの先生だって捨てたもんじゃないぞ。」、博「ひげそってね。」、社長「ちゃんと背広着てね。」、博「風呂に入って。」、おばちゃん「歯、磨いてね」、ワッハッハッハ・・をテンポよくやる。とらや家族の毒舌芸がめだった作品であった。


posted by rukert | Comment(0) | TrackBack(0) | 男はつらいよ
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