2011年02月23日

山田洋次監督「男はつらいよ 柴又慕情」第九作メモ



「寅の夢」のストーリーとは独立バージョンが初登場。寅は「無駄な人殺しはしたくはございません」から始まって終始かっこいい。そして時代劇調なのに、突然「おにいちゃん」のキメゼリフも。夢シリーズでは最重要な悪役の吉田義夫も夢デビュー。本当に強烈なキャラの役者さんです。

帝釈天のツバメの巣を取り払ったらツバメがかわいそうとさくらさんが言うと、御前様が「あんたらしいことをいうねぇ」と印象的なお答え。そして、さくらさんが「えっ」とちょっと照れるのがチャーミング。

この回あたりから、さくらさんが微妙なキャラ変化するのが見所。少し貫禄がで辛らつだったりするのが面白い。その1、おいちゃんのことを「じゃまよ、こんなところに」と押しのける。初代おいちゃんにはこんなこと言わなかった。二代目の松村達雄おいちゃんは、ちょっとなめられキャラだったりする。

寅が貸家を探すところで、相変らず細部のディテールが明快な妄想一人語りをする。うまくておもろい。

どうでもいいけど、あの仲介手数料の6000円は払う必要あるのだろうか?

博が、寅に新築予定の自宅のことをボロクソ言われて、真顔で「にいさん、ひどいこというなぁ」というのはいいシーンなんだけど、なんだかおかしい。

さらに、タコ社長が、さくらのいいセリフを盗用してギャグにしてしまうのが洒落ている。

久々に津坂匡章の登登場。相変らず、かわいい舎弟である。穿ったことを言うと、この二人でいる楽しくて仕方ない感じが、裏返しで寅の対女性関係を暗示してしまっているようなところがある。

寅が写真を撮るときに言う「バター」は、第一作の御前様のパクリである。でも、寅さん、そのギャグはあなただから許せるけど本当は全然面白くないです(笑)。

吉永小百合は、やはり独特な清純派ですね。でも、私はNHKの「夢千代日記」が文句なくすきです。武満徹の音楽もピッタリはまっていた。

吉永小百合が「バター」に笑えるのをこらえる演技をするのかぜ妙にうまい。

名優シリーズは宮口精二登場。キャラクターによくあった役だけど、あまり見せ場がないまま終わる感じ。でも、頑固で寡黙なまま終わるのがらしいのかもしれない。

さくらさんが、歌子の写真を見て全てを察する表情がいい。おかしい。

タコ社長が、「年なんか問題ないんじゃない」と相変らず空気読まない発言して笑える。そう、とことん空気読まないキャラだ。

さくらさんのキャラ変化その2.寅に金をねだられ、「なにすんの、パチンコ?」と憎まれ口を叩いたり、賽銭でさくらの幸せを祈るといわれ「いやだぁ」という。単なる心の美しいキャラじゃなくなって、ますます魅力が増している。

歌子がきたところに、客が来て、「おじさんだんごある?」というと寅に追い払われて「だんごやじゃねぇか」というシンプルなギャグが妙におかしかった。

さくらさんのキャラ変化その3。歌子に寅がなぜ結婚しないのかと聞かれたところに、さくらさんが「失恋したんじゃないの」と平気でいう。昔はこういう軽口をいえないまじめな人だったのにね。

さくらさんのキャラ変化その4。歌子を駅で見送り、寅がまた来るといっていたなと嬉しそうに言うと、さくらさんが「はぁ」とため息をついて、「ああん、別になんでもない。と手をふる。とてもチャーミング。寅との親愛度がますます増している感じなのだ。

さくらさんのキャラ変化その5。キャラ変化というほどではないが、博に月給が出た際に、後ろ手で「月給」という。「さくら母さん」になりつつあってよい。

というわけで、本作のさくらさんはお茶目でかわいらしいのだ。次の作品では、ほとんど元に戻るので貴重な作品。

寅は(歌子さんが)「今日もこなかったか」と自分で口に出したのにも気がつかない。寅は被害妄想、かつ心の中が言葉に出てしまう精神の病の寸前段階なのだ(笑)。

寅と源ちゃんが、帝釈天の廊下ですべって遊ぶシーン。寅と登と源ちゃんという存在は全て同種で、普通に暮らす家族たちと対照的な存在で、なおかつ世界になくてはならない存在として、このシリーズ全体を通じて位置づけられている。

寅が、家族に馬韓にされて、「こんな悪魔の棲家みてぇなところ」という言葉の使い方が笑える。そこまで言うかと。

二代目の松村達雄おいちゃんは、つまらないダジャレを言って思いきりすへったりしている。「二代目おいちゃんはつらいよ」である。まじめな話、あの強烈な森川信の突然の代役なんで大変だったろう。

さくらさんは、歌子が最初から泊まりに来たのが分かっていたらしい。さすがだ、全然気づかなかったよ(笑)。ちなみに、歌子も寅の部屋に何泊かするのでこれでマドンナでは人目。

博が、歌子を励ますために、寅のおかげてプロポーズできたことを言う。博も寅のおかげだったと認めるシーン。シリーズを感じさせるシーンですね。

寅の失恋は気の毒だが、ここ何作で続いていたちょっと変った失恋シーンでない、分かりやすい定番なのでなぜかホッとする。

失恋して旅に出る寅を慰めるさくらさんは、キャラ変化のないいつも通りのさくらさんである。勿論、そうじゃないと困る。寅が「また失恋したか」と自分で口に出して気づかない「病状」つき。

寅が旅に出で、しばらく経ち、おぱちゃんがかき氷を一心にかくおなじみのシーンもこの作品からか。
posted by rukert | Comment(0) | TrackBack(0) | 男はつらいよ
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