2011年02月16日

山田洋次監督、渥美清主演「男はつらいよ」第一作メモ



見れば分かるという映画の典型で、余計な感想など不要だけれども記録のための見たまんまのメモ。

さくらさんの初々しさといったらない。まだ結婚前の若い娘で、髪の毛も染めているしミニ。こんな時代もあったのだ。いきなり、葛飾柴又の方々の中にふっと現れ出ずるお姿は、まさに掃き溜めに鶴。ごめんなさい柴又の人たち。そして、寅さんにおびえる様子が何ともチャーミングなのである。そして、最初からちゃんと「おにいちゃん」きました。ここでは、おにいちゃんなの、という不安と期待を込めたパターン、今後数限りなく違うパターンの「おにいちゃん」が繰り返されるのだ。

そんなさくらを、寅さんはひっぱたいたりしている。それゃ、おいちゃんじゃなくとも怒る。これが最初で最後だったかしら。

そんな寅さんが、おいちゃんにひっぱたかれる。森川信のおいちゃんはサイコー。寅を「これをオヤジの拳固だと思え」といって殴るシーンでも、どこかおかしい。寅が光本幸子のところに通いつめる場面の、とぼけた「いってらしゃい」もあれは森川信にしか出来ないよ。寅も、おばちゃんや登に因縁をつけても、おじちゃんは完璧にとぼけているのでからめないのだ。しかし、観るものにはおいちゃんがとぼけてシランプリほしているのがちゃんと伝わる至芸。

おいちゃんに殴られて庭にうずくまる寅を、カメラが俯瞰でとらえて、さくらさんとその影の後ろ姿が寅に寄り添うところはとても映画的で美しい。さくらさんが寅に優しい言葉をかける前から、さくらさんの優しさが伝わってくる。

今回改めて見て、これは映画としてもとてもよく撮れていることを再確認。つい強烈なキャラクター郡に目がいくが、それをつつみこむ山田洋二スタイルの映像に、観るものは気がつかずに安心しきって身をまかせているのだ。柴又の街の映し方などの全48作変らぬ様式美。冒頭の寅がとびいりする祭のシーンからしてみごとだ。

冒頭に寅のナレーションが入る。渥美清の語りにはえもいわれぬ説得力があって、「寅のアリア」につながっていくのだ。

寅がさくらのお見合いを台無しにするシーンは、映画だとわかっていてもハラハラする。でも、あれでよかったのだ。さくらは博がすきなのだから。そして、二人の間も寅がぶちこわしそうになるが、それも結果的オーライ。博も多分いつまでたってもさくらに告白できなかっただろうし、さくらさんも自分から言うタイプではない。というわけで、見事に寅は愛のキーピットの役割を果たしている。

ここでの博さんも、とってもよい。前田吟はここでの演技が恥ずかしいらしいが、本当にマジメで男らしくて純情でいいじゃないですか。さくらに「別れのプロポーズ」をするシーン。昔はちょっと恥ずかしく感じたが、今回はとてもよくって泣きそうになった。私も歳をとったということだ。

その博が寅に舟でマジメにくいつくシーンもいい。寅さんが博の口調を真似るところは、本映画で一番わらってしまった。

そして寅が博に「女を目で口説く方法」を伝授し、光本幸子にも実践するが「寅ちゃん、目にゴミでも入ったの」といわれちゃうのも相当おかしいところだ。

笠智衆のは最初寅を「覚えとる、覚えとる」というところからキャラクターが出来上がっている。しかし、京都旅行ではスーツ姿に身を包んで、ちょっと御前様っぽくないのが第一作らしいところ。写真を撮る時「バター」というのは、御前様オリジナルだったのか。その後、寅が散々パクるみとらなるのだが。吉永小百合マドンナの回でもやっておったな。

社長が結婚式場に、バイクですごい勢いで走りこんでくるシーンが妙に印象に残る。映画的なシーンの一つ。

志村喬には誰もが泣かされるだろう。ここではひたすらいい役だけれど、後の作品ではもう少し父子の相克すが描かれて、そこでの単なるいい人でない志村喬もとてもよかった。寅が無愛想な志村に結婚式の間中、気に入らずに毒づいているのが巧妙な伏線で、志村のスピーチでみんなしてやられる。

津坂匡章(現:秋野太作)の登がとってもいとおしく感じた。前見たときにはこんなに思わなかった。

佐藤蛾次郎の源ちゃんは最初から寅とマドンナ光本幸子のボートデートをスパイしている。そして、寅が光本幸子の婚約者のことを知ったところで笑っていて、ちょっとドキっとする。後年のように、思いっきり寅を笑う感じではないので。こういうのも第一作らしい。

光本幸子のマドンナはそんなに印象がなかったけれど、酔っ払って歌いながら寅と夜の柴又の商店街を歩くシーンなど、なかなかいいと思った。

寅さんは、若くてちょっと乱暴だけれど、最初からちゃっんと寅さん。マドンナと魚釣りにいこうとする際の麦藁帽すがたがかわいい。こういうのは渥美清の反則攻撃だ。

第一作からして、素晴らしい出来。まだ、マドンナが中心でないところだけがシリーズと違うが。博とさくらさんが結婚するのだもの。それだけで十分だ。



posted by rukert | Comment(0) | TrackBack(0) | 男はつらいよ
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。