2011年02月07日

成瀬巳喜男「お国と五平」感想

1952年。お国(木暮実千代)と五平(大谷友右衛門)がお国の敵討ちの旅をするロードムービー。
木暮実千代が抜群に美しく撮れている。溝口の「祇園囃子」も色気があって素晴らしかったが、こちらは本当に女性らしく「美しい」という感じ。こんなことばかり書いていて恐縮だけれど、成瀬映画は女優の美しさだけでも十分観る価値があると思うのだ。その点、小津の「お茶漬の味」はあんまりよく撮れてない。小津は女性を撮るのは上手じゃないし、そもそも女性が少し苦手だったのではないかしら。
そう言えば、お国の母親役が三好栄子なのだが、彼女までが気品ある女性に撮れている。それこそ小津の「おはよう」や「東京暮色」ではとんでもないババアで、そういう役だし彼女の持ち味なのだろうが、そういう三好まできれいに撮ってしまうのは成瀬マジックだ。
これは、「歌行燈」と違って、いかにも成瀬らしい時代ものだ。ラスト近くまでは、二人の旅を淡々と映してほとんど事件らしい事件も起こらない。ただ、二人の男女の微妙な内面を描き出すのだ。
成瀬らしい美しい雨のシーンで、五平がお国の敵の友之丞(山村聡)の関係に疑いを持って逆上しかけ、それをお国が諌めるところなど、いかにも成瀬的だ。大谷友右衛門の純情なまっすぐな目と、それを言葉では諌めながら五平の想いをしっかりと感じ取るお国。
友之丞(山村聡)が登場して、俄然映画は緊迫する。それにしても、山村聡はこういう卑劣な感じの男を演じさせたら天下一品だ。本当に素晴らしい。小津の「宗方姉妹」も見事だったけれど。
友之丞が五平に討たれる場面で言うことは、いちいちもっともだ。死にたくはない、二人の忠義は二人が既に愛し合っている以上ウソだ、自分は二人の幸福を願うから命だけは助けてくれ、と。武士道からすると卑劣だけれども、現代的には友之丞は一応もっともなことを言っているのが、なんだか面白いところだ。しかし、最後が余計で、五平に斬られて死にかけているところで、友之丞はお国と関係があったといい残すのだ。なんと卑劣ないやな男、そしてそれをやりきる山村聡は名演としかいいようがない。



posted by rukert | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画

成瀬巳喜男「芝居道」メモ

戦時中の映画。映画中の芝居の演目に戦争ものが出てきて 「歌行燈」よりも戦争を感じさせる。長谷川一夫が苦労して芸の道をきわめる話。山田五十鈴が恋人で「鶴八鶴次郎」と似ているが二人の深いからみはなく、ストーリー自体も単純で成瀬らしい傑作とはいいがたい。
ただ、キャストは面白くて、古川ロッパが大阪人らしい雰囲気を出しているし。娘役の明るい人のいい花井蘭子も印象的だし、ロッパの敵役の志村喬もいい味出しているし、進藤英太郎も相変らずいい声だ。
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