2011年01月23日

成瀬巳喜男 「女の座」雑記

原節子出演の成瀬映画が見たくて、ビデオを探したらスカパーで成瀬映画を録画しておいたのをたくさん発見して少しずつ見ている。
この 「女の座」は1962年の作品。モノクロで撮られている。
女がやたら多い現代家族の物語で、成瀬作品らしくオールスターの色々な女優のそれぞれの女性らしさが楽しめる。
司葉子が、相変わらず日本のオードリー・ヘップバーン的雰囲気をかもし出している。1960年の小津の「秋日和」にも原の娘役で出ていてその2年後だが、比較してもやはり女性を美しく撮るのが成瀬はうまいと思う。変わり者で貧乏だが人間がよくてハンサムな夏木陽介といいところの息子で金持ちだがあまり感じがよくない男のどちらかを選ぶことになり、見ている人間は当然夏木との純愛を期待するが、司葉子はあっさりと金持ちの息子の方を選ぶ。なんとなく成瀬的である。
草笛光子が、独身の気ままでプライドが高くて我儘な女性を演じているのが強烈な印象を残す。宝田明に一目ぼれして、宝田のアパートで、自分から告白、プロポーズするシーン。大真面目なのだが、部屋の外で、アパート管理人の娘が盗み聞きしていて、部屋から出てきた草笛をニヤニヤみつめて「オールドミスっいすごいわね。」という。なんとも意地悪な成瀬の演出で、こういうところも成瀬的だ。
そして、宝田が好きな高峰秀子に猛烈に嫉妬して、高峰が本当は単なるワルの女たらしの宝田の本性を見抜いて、草笛などに関わらないように説得するのを誤解して、こっそり会うなんてと、高峰のほっぺたを張り飛ばす。これまた成瀬的だ。
それでも、高峰は黙ってじっと耐える。「流れる」の田中絹代同様、ここでの高峰秀子はめちゃくちゃイメージアップのいい役だ。
宝田明は、とんでもない詐欺師の女たらしなのだが、高峰秀子のことだけは本当に真面目に好きになったようだ。そして、宝田も真面目に高峰に告白する。高峰も未亡人なで一応は自由の身だ。ロマンティックな映画ならば、ダメな男とそれをささえる優しい女という展開になってもおかしくない。しかし、高峰の反応はきわめて現実的だ。はっきり、「迷惑だ」と断り、さらに「あなたは自分の不幸を売り物にしているのよ」と辛辣極まりないセリフをはく。悪役の宝田が気の毒になるくらいだ。というのも、実に成瀬的ではないか。
といった具合に、成瀬的なさめた視点で、個性派の役者たちの人間模様をユーモラスに、あるいは少し真面目に描き出した作品である。しかし、脚本は高峰の高校生の息子が急に電車に飛び込んで自殺したりして、なおかつその葬儀をコミカルに描いたり高峰の真面目な愁嘆を描いたりよくわからい映画である。作品としての完成度は高くないのかもしれない。
ところで、ラスト近くで、笠智衆と杉村春子と高峰秀子が、老後に一軒家で静かに暮らそうと他人の家を物色してのぞきこむと、その家の男と顔を合わすシーンがあるが、チラッと映ったのが前田吟のような気がするのだけれど違うだろうか。
とにかく、辛辣で現実主義的な成瀬的視点にニヤニヤしてしまう映画である。
posted by rukert | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画
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