2009年01月13日

ピンクの豹(ピーター・セラーズ他、ブレイク・エドワース監督)



ピーター・セラーズのファンである。ピンク・パンサーシリーズをはじめ、キューブリックの「博士の異常な愛情」、「マダム・グルニエのパリ開放作戦」等々、そして、ハル・アシュピーが撮った「チャンス」という不思議な映画。
彼はコメディアンであると同時に偉大な役者だった。「チャンス」で共演したシャーリー・マクレーンの証言によると、なぜあれほどまでにもどんな役にも完全に成りきれるのかと聞かれて、その役の人生を実際に生きたことがあるような気になれるという意味のことを答えていたそうである。役者ということをこえて、人間として何か特別なものを感じさせる俳優である。
ピンクパンサーのクルーゾー警部といえば、ピーター・セラーズである。どちらが本物の人格が分からないくらい、まさに役柄になりきっている。
このピンクの豹はシリーズ第一作。主演はデビッド・ニブンなのだが、完全にセラーズが主役をくってしまっている。怪演であり、この後はセラーズが主役のシリーズが何作も撮られることになる。監督はオードリー・ヘップバーンの「ティファニーで朝食を」なども手がけた名匠ブレイク・エドワース。従ってコメディなのだけれども、映画としてのクウォリティもきわめて高い。
とにかくセラーズが、古典的にこれでもかこれでもかとボケ倒すのである。いきなり地球儀を回したのを忘れて手をついてこけるシーンで登場。古典的ボケもいいところなのだが、その表情、動作、発声等完璧である。余計な小細工などしなくても十分笑わせることが出来るのだ。当然、チャールズ・チャップリンやバスター・キートンと名前を並べられてしかるべき人である。
クルーゾー婦人役のキャプシーヌが、セラーズと息のあったところを見せていて、とてもよい。ベッドで彼女が夜眠れないと言うと、クルーゾーがいつもの手を使おうと言い、キャプシーがあわててやめさせようとする。何をするのかと思ったら、セラーズが、とてつもなく下手糞なヴァイオリンをギーギーやりだす。ライトがついた時のキャプシーヌの「カンベンしてちょうだい」という表情に腹を抱える。間男二人を部屋に隠してセラーズと演じるシーンは、芸術的な小劇である。いかにもフランス風の美女なのだが、ぶっちゃけて言ってしまうと、ああいう「いーい女」(志ん生のように力んで発言すること)がコメディを真剣にやっているのを観ているだけで、もう満足である。
ちなみに、ウィキペディアを見ると、ダーク・ボガードが生涯唯一回プロポーズした女性だとか(断った)、重度の鬱病でマンションから転落死したとか、興味深いエピソードがのっていた。色々問題の指摘されるウィキだけれども、手っ取り早くこうした情報が得られるのは、やはりすごいことではある。
あと、仮装パーティのシーンで、シマ馬に仮装した警官が出てくるが、あの声というのは次作以降レギュラーとして登場するケイト−のような気がして仕方ないのだが、どうだろう。結局着ぐるみを着たまま終わるのだが、あの存在感はすごい。
とにかくコメディの古典的名作。一度は見る価値のある作品だと思う。


posted by rukert | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画
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